1. 前回
前回はニュートン算の基礎的な例題を解きました。
その中で小学生だった頃の自分はどこが理解できなかったのかを分析しました。
また、最後に応用問題に挑戦しようとしたところ、方程式使わない縛りの前に無惨に敗退するところで終わりました。
今回はリベンジします。
また、どうでも良い話ですが文章を書いていると無意識にですます調になるので、前回とは若干文体を変えます。
2. 難しい問題も解きたい
前回、全然解けなかった応用問題を解きます。問題は同じサイトから引用させていただきました。
ある前売り券の発売開始時刻に、すでに何人かの行列ができていて、その後も毎分一定の割合で行列に人が加わっていきます。
発売開始時刻に窓口を3ヵ所開けると15分で行列がなくなり、6ヵ所開けると5分で行列がなくなります。
はじめ窓口を2ヵ所開けて発売を開始し、発売開始5分後から窓口を増やしたところ、その8分後に行列がなくなったとき、増やした後の窓口の数は何ヵ所ですか。『中学受験の教材制作室』より引用
3. 解いていく
まず、前回の最後らへんでも述べた通り方程式使わない縛りだと全然解けませんでした。
最初に方程式を使って普通に解いてみたい。
以下のように文字をおきます。
- 最初の行列に並んでいる人数
N
- 毎分行列に加わる人数
ΔN
- 窓口一つが毎分販売できる人数
p
- 増やした窓口の数
x
すると、
ある前売り券の発売開始時刻に、すでに何人かの行列ができていて、その後も毎分一定の割合で行列に人が加わっていきます。
発売開始時刻に窓口を3ヵ所開けると15分で行列がなくなり、6ヵ所開けると5分で行列がなくなります。
は、「(行列に最終的に並んだ人数) = (窓口で捌いた総人数)」と考えて立式すると、以下のように表されます。
N + ΔN * 15 = 3 * p * 15 N + ΔN * 5 = 6 * p * 5
これを p
と N
について解くと
p = 2/3 ΔN N = 15 ΔN
となります。 ここで ΔN
がゼロだと自明な答えしかないので、 ΔN != 0
とします。
次に
はじめ窓口を2ヵ所開けて発売を開始し、発売開始5分後から窓口を増やしたところ、その8分後に行列がなくなった
についても同様に立式すると、
N + ΔN * (5 + 8) = 2 * p * 5 + (2 + x) * p * 8
となるので、 p
と N
を代入して
15 * ΔN + 13 * ΔN = 10 * 2/3 * ΔN + (2 + x) * 8 * 2/3 * ΔN
両辺を ΔN
で割ると(0だと最初の列も窓口の処理能力もゼロになることは先ほどみた通り)
x = 2
となるので、「増やした後の窓口の数」は 2 + 2 = 4 つとわかります。
方程式なしで考える
引用したサイトに従うと、まず次の値を計算します。
(窓口が3つの時に捌いた人数 - 窓口が6つの時に捌いた人数) / (窓口が3つの時の所要時間 - 窓口が6つの時の所要時間)
これが、毎分行列に並ぶ人数( ΔN
)になるらしいです。
???
確かめてみます。
先ほどの変数を使うと確かにそうなっています。
[(N + ΔN * 15) - (N + ΔN * 5)]/(15 - 5) = ΔN
見てわかるように「15分」や「5分」の情報も一般化できます。
右辺についても同様の計算をすると、
[(3 * p * 15) - (6 * p * 5)]/(15 - 5) = 1.5 * p
のようになります。
参考にしたサイトでは、窓口一つが毎分販売できる数(上の説明では p
)を太字の 1
とおく、という実質文字式のようなことをやっていました。
では、それに倣って窓口一つが毎分販売できる数を太字の 1
とおきます。
すると、
(窓口が3つの時に捌いた人数 - 窓口が6つの時に捌いた人数) / (窓口が3つの時の所要時間 - 窓口が6つの時の所要時間)
は
[(3 * 1 * 15) - (6 * 1 * 5)]/(15 - 5) = 1.5 * 1
となり、毎分 1.5 * 1
人が並ぶことがわかります。
すると、窓口あたりの実質の処理能力がわかりますので、この並ぶ数を差し引いた最初の行列の人数もわかります。
「(毎分処理できる数 - 毎分並ぶ数) * 所要時間」が最初の行列の人数にあたります。
求め方は二通りあり、窓口が3つの時は
(3 * 1 - 1.5 * 1) * 15 = 22.5 * 1
となりますし、窓口が6つの時は
(6 * 1 - 1.5 * 1) * 5 = 22.5 * 1
となり、結局同じ数を与えます。
次に、2つの窓口で5分間販売すると、販売できた数は
(2 * 1 - 1.5 * 1) * 5 = 2.5 * 1
ですので、残りは 22.5 * 1 - 2.5 * 1 = 20 * 1
です。
この残りを8分で捌いたので、1分あたり実質 20 * 1 / 8 = 2.5 * 1
人を処理したことになります。
毎分 1.5 * 1 人増えるので、本来はこれらを足した数 2.5 * 1 + 1.5 * 1 = 4 * 1
人を捌けることになります。
ここで 1
は窓口一つが毎分販売できる人数なので、これは窓口4つ分に相当します。
よって答えは、4つとなります。
4. 振り返る
まず、これ思いつく人いるのか?
毎分増える人数 = (窓口が3つの時に捌いた人数 - 窓口が6つの時に捌いた人数) / (窓口が3つの時の所要時間 - 窓口が6つの時の所要時間)
なんとかして表現しようとすると、気がつけば私は線分図を書いていました。
方程式というか文字式無しだとこうやって未知の量を表すしかないんでしょうね〜
当時は「そういうもんだから」と線分図を書いていましたが、おそらく私が自然と行き着いたような理由から中学受験では広く採用されているのだと思います。
5. おまけ
せっかくなので、もう1問解きます。
引用元は同じサイトです。
ある遊園地の入場開始時刻に、すでに長い行列ができていて、その後も毎分一定の割合で列に人が並びます。
入場口を4ヵ所にすると1時間で行列がなくなり、入場口を5カ所にすると40分で行列がなくなります。
入場口を六カ所にして開始しましたが、途中で入場口を2カ所減らしたため行列がなくなるまで33分かかりました。
入場口を減らしたのは入場開始時刻から何分後ですか。『中学受験の教材制作室』より引用
早速解いていきます。
ある遊園地の入場開始時刻に、すでに長い行列ができていて、その後も毎分一定の割合で列に人が並びます。
入場口を4ヵ所にすると1時間で行列がなくなり、入場口を5カ所にすると40分で行列がなくなります。
先ほど解説した方法がそのまま使えます。
一つの窓口が1分間に捌ける人数を 1
とします。
すると、1分ごとの行列の増加数は 1
を単位として
(4 * 60 * 1 - 5 * 40 * 1) / (60 - 40) = 2 * 1
となります。
すると、窓口が4つの場合には、後から並んだ人を含まない1分あたりの処理人数は 4 * 1 - 2 * 1 = 2 * 1
となりますから、最初の行列の人数は
2 * 1 * 60 = 120 * 1
となります。
あるいは、窓口が5つの場合は、後から並んだ人を含まない1分あたりの処理人数は 5 * 1 - 2 * 1 = 3 * 1
となりますから、最初の行列の人数は
3 * 1 * 40 = 120 * 1
となります。(当然同じ結果になります)
ここまでは先ほどの例と同じです。
面白いのはここからです。
入場口を六カ所にして開始しましたが、途中で入場口を2カ所減らしたため行列がなくなるまで33分かかりました。
そうです。つるかめ算です。綺麗に合体していていいですね。
つるかめ算の(方程式を使わない)解き方は私は覚えていますので、そのまま解きます。
まず、最後まで窓口を6つで捌いたとしましょう。
すると、実質の処理能力は1分ごとの増加分 2 * 1
を差し引いて 6 * 1 - 2 * 1
、33分間では
(6 * 1 - 2 * 1) * 33 = 132 * 1
人を処理できます。
最初の列は 120 * 1
人なので、 132 * 1 - 120 * 1 = 12 * 1
人だけ余分に処理していることになります。
これは、もちろん途中で窓口を2つ減らしたことによる差分です。
何分間かは 2 * 1
人分を余分に計算していることになっています。
ではそれが何分間なのかというと、12 * 1 / (2 * 1) = 6
より、「6分間」窓口を2つ減らして4つにしているとわかります。
よって、今
入場口を減らしたのは入場開始時刻から何分後ですか。
が問われていますから、答えは 33 - 6 = 27
(分後) です。