魂の生命の領域

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パンの大神 を読んだ(もしかしたらネタバレ含んでるかも)

はじめに

怪奇小説は短編や中編が多いのでサクッと読めるかなと思い、古典名作である パンの大神 を読みました。

去年はサクッと読める本として新書を何冊か読んだのですが、なぜか今年になってからは古典名作を読もうというマインドになりました。

まぁいろいろと気移りしやすい性格なのでクトゥルフ神話の原作の方は相変わらず 異次元の色彩 の終盤で止まっているんですがね。

kesumita.hatenablog.com

引用した過去の記事でも述べているようにクトゥルフ神話の原作は読みづらいんですよ…

対して今回のパンの大神について言えば、非常に読みやすいです。 ですが、あとで説明するようにある意味では読み辛さもあります。

あらすじなど

あらすじとしては、冒頭はこんな感じです。

主人公らしき人物のクラーク氏はレイモンド博士の自宅で、少女の脳に "いたって簡単な" 外科手術を施すことで精神世界を直接見に行けるようにする(昔の人は「パンの大神に会いに行く」と呼んでいた)実験に立ち会います。

手術は成功しましたが、すぐに少女はとてつもない恐怖に遭遇したように見え、そのまま完全に正気を失ってしまいます。

場面が変わって、クラーク氏がヘレンという名の少女が森で「裸のおかしな男」と「戯れた」ことで関わった周囲の人がどんどん狂っていった、という記録文書を読んだりします。

そこからはロンドンの上流階級の男がある女性と関わったことで次々とありえない自殺を遂げていきます。 ここの流れで、章ごとに主人公がコロコロ変わるので、よくわからなくなってきます。 お話の都合上主人公として出てくるのが全て男性なので「19世期のロンドンの上流階級の男性」というイメージで自分の中で出てくる人物を、同時に何人も主人公格として脳内で保持しないといけないのです。 これが先ほど述べた「ある種の読み辛さ」ですが、これらの主人公は独立しているわけではなく、話が進んでいくにつれて徐々につながってきます。

そして男を次々と狂気に陥れた女の正体とは…、いったい何があったのか…?みたいなお話です。

感想とか

ここからはいろんなサイトの解説を読んだ上での感想です。

本作が出版されたのは 1890 年とか 1894 年とからしいです。 日本だとまだ明治時代です。(日清戦争とかその辺り)

あとで知ったことですが、このパンの大神というのはギリシャ神話のパーンという神様のことを言っているみたいですね。あとクトゥルフ神話でもこれに関連したお話があるみたいですが、少し調べるとまるでゲームキャラの設定資料みたいな設定一覧が出てきたので興醒めしてすぐに中身を忘れるようにしました。欲しいのはそういうのじゃないんだよなぁ…。

ja.wikipedia.org

このパーンという神様は森に住む羊っぽい獣神で、めちゃくちゃ女好きの設定らしいです。 つまりヘレンは森でパーンと…という推測がある程度できる形となっています。

物語の最後では「男を次々と狂気に陥れた女の正体とは…」の箇所はしっかり明かされてそれを持って全体の話が繋がるようになっていますが、具体的にその神様とどう関わったのか、については、「あまりにもおぞましい」とか「言葉にするのも憚られる」みたいにずっとボカされたままです。

まぁ明らかにアレなことが背後にあるのを直接言わないようにしているんですね。

なんか当時の19世期の西洋社会ではこういう配慮も必要だったみたいな解説もどこかで読んだ気がします。

私は人類が想像すらできない世界の存在を前提としてそれに触れてしまった人が処理しきれなくなる、今やクトゥルフもので定番となった世界観が大好きなので、結構ワクワクしながら読めました。 ジワジワ背後にある「闇」について察しが着きながらもどんどんそれが本当か確かめるためにページが進みます。

一方で、登場人物同士の関係性が追いきれなくなる、散々核心に迫ると見せかけて「これ以上はあまりにも恐ろしいので見せられない」みたいな感じで引っ張る割に全部教えてくれないじゃん、みたいな感想を持つ人もいると思います。

まぁ私は登場人物の一覧だけで1ページ丸々埋まるぐらいの1800ページぐらいの長編小説も楽しく読める人間なのでこの程度は屁でもなかったですね(イキリオタク

まとめ

今でこそもっと恐ろしい設定や描写などを考えることもできるかと思いますが、初期の名作として本当にこの手のジャンルの "本質" みたいなところを抽出したような作品となっていますので、是非読んでみてください。

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