魂の生命の領域

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ウェンディゴ を読んだ

はじめに

最近 Kindle の Prime Reading で古典名作を読むのにハマっています。

Kindle なので文庫本で考えたときのページ数はあんまりよくわからんですが、長編というより中編ぐらいの長さの名作はさくっと読めますし、 Kindle Unlimited まで契約しなくてもプライム会員の範囲内で古典作品は無料ないし100円程度で読むことができます。

kesumita.hatenablog.com

前回↑の記事でもそんな感じに読んだやつでした。

そして次に読んだのがこの ウェンディゴ です。 読みたいひとは事前に ウェンディゴ という単語でググらない方が良いと思います。

また前回のようにゲームのキャラ設定資料みたいな無闇に体系化された設定が出てきて興醒めするからです。 よくわからないままに読むのがいいんですよ。

あらすじなど

ある年の秋、カナダの原始林にスコットランド出身のキャスカート博士、甥で神学生のシンプソン(主人公)が、案内人のジョセフ・デファーゴ(大自然に魅せられた経験豊かなオッサン、やや気難しいところもある)、ハンク・デイビス(陽気で粗野なキャラ枠)、そしてインディアン(ネイティブアメリカン)のプンクがヘラジカの狩猟に向かいます。

なぜか今年は例年に比べてヘラジカが全然見つからないらしい。

キャスカート博士とハンク、シンプソンとデファーゴの二組に別れて野営地からさらに深い森の奥へ奥へと向かうことになりますが、デファーゴはわずかに複雑な心境のように見えます。 周囲は理由は何かわからないが、何かに怯えているような雰囲気を感じ取ります。

それでも一行は雄大大自然にウッキウキで森や湖を通っていきます。

ウキウキで探索する一方で、人間が決して足を踏み入れることのない大自然にポツンと自分がいる状況がなんとも心許なくも思えます。

そんな中で心強い案内役のデファーゴが不意に何かの気配に気付き、怯え始めるとシンプソンもその何を感じとります。

何のものかはわからない獣の匂いを感じます。

デファーゴは森の迷信として、「ウェンディゴ」という想像上の獣のことについて少しだけ教えてくれますが、あまり詳細については語ってくれません。

寝始めるとシンプソンは、何かの気配、何かの影のようなものをぼんやり感じながら眠りに落ちていきます。

翌日、デファーゴは謎めいた言葉を絶叫しながら物凄い勢いでどこかに走り去ってしまいます。

シンプソンは足跡を頼りにデファーゴを追うが…

感想など

まず文章の表現力が凄い。

大自然雄大さとその中にいる自分のちっぽけさ、心許なさがあらゆる言葉を尽くして鮮やかな情景とともに感じられます。

舗装された道路でも、街灯の少ない木の生い茂った夜の公園の近くを通るとなんとなく駆け足になる、ゆっくり歩くのが怖いような感覚は誰にでもあると思いますが、その記憶とガッツリ結びついてなんとも言えない恐怖を思い出させてくれます。

今まで自分を祝福してくれているように感じていた神秘的な大自然が急に敵に回ったように感じる孤独と恐怖。

そして、あくまでその恐怖感の擬人化(人じゃないですが)のようなものとして迷信にあるとされた ウェンディゴ の存在を確かに感じ、姿は見えずともその存在感に圧倒され、慄く様子を物凄い解像度で感じることができます。

人の立ち入らない未開の地に残った「伝承」がデファーゴを通して目の前に現れる感覚…

いやー凄いですね。

私は文章力がないので、これ以上素晴らしさを伝えようとすると全文コピペするしかなくなります。

天にいる偉大なる唯一神、みたいなものではなく神秘に包まれて大自然のどこかに潜む神々…みたいな感じがとても良い。

これは是非とも読んでいただきたい。

個人的には最後の一文で最高に痺れました。

当然そこだけ読むと特に何も感じないですが、全体を通して読んで味わったあとのあの一文は、凄い。

早く読んでくれ。