はじめに
蟹工船 を読みました。例にもれず Kindle で購入(0円)したシリーズです。
中学か高校で日本史を学ぶとこの小説の存在自体は必ず知ることになります。 大正時代あたりで「プロレタリア文学」なるものの代表格がこの蟹工船だと習います。
その習った当時は共産主義も社会主義も何も知らないのでただこの「プロレタリア文学」と「蟹工船」という単語だけを覚えて、テストの問題文の中にどちらかが出てきたらもう片方を書けば正解になったわけです。
私はここ数年でカルト趣味の一部として社会主義とか共産主義とかそういったものに興味を持っていますが、当時はこの辺りの歴史を学んで何を思っていたんだろうか。
十数年程度前の話ですが、当時もカルトについて関心は持っていたはずなのに一切思い出せないということは多分そこまで思想に踏み込んだことは教わっていなかったんでしょうね。
まぁ社会科の教員がバリバリの共産主義者だったら引くから別に良いんですが。
出版されたのがちょうど世界恐慌のあった1929年で、この頃には既にロシアは革命が起きてソビエト連邦になっています。
あらすじなど
函館から出港した蟹漁船内での劣悪で過酷な労働環境、労働者は命がけで働くが誰も報われず、自分たちを雇っている金持ちは丸ビルで「国富のため」だの「日本男児の精神性」だのを綺麗事のように説くが、当の労働者は荒れ狂う北の海で蟹をとっている。
最初は監督に皆虐げられながらも懸命に働くが、仲間の船が沈没しても見殺しにしたり、事故死したり虐待死したりする人が出てくる。
ある時、大時化の中無理やり漁に駆り出されて遭難してしまった仲間が戻ってきます。 彼らはロシア(樺太)に漂流して、そこでロシア人に救助してもらっていたのでした。 そこで彼らは「労働者の方が偉い。資本家は働かずふんぞり返っているだけだ。労働者は資本家を打倒しなければならない」という話を聞いて盛り上がり、それを蟹工船の仲間たちに持ち帰ります。 漁夫たちは共感しますが、中にはそれが「恐ろしい赤化」のことだと気づいている者もいました。
漁夫たちは「危険な環境で死ぬ」のではなく「殺される」と考えるようになります。 そして誰かが統率をとるでもなく、なんとなくの空気感で示し合わせて微妙に仕事をサボったりすることを通して徐々に「労働者が団結して反抗する」感覚を掴んでいきます。
そんな中、脚気によって27歳の若さで亡くなった仲間の葬儀を監督に蔑ろにされたとき、わざわざ思想に疎い者だけ集められて構成された漁夫たちはついに決断する。
蟹工船という狭い空間で一緒に過ごしてきたによる連帯感により一致団結して、監督に「要求事項」を突きつける…
感想など
あらすじで9割ぐらいネタバレしていますが、大した問題ではないです。 なぜならこれがプロレタリア文学だと知った上で読むことがつまりそういうことだからです。
なので是非読んでみてほしいです。 別にこれを読んだからといって誰しもが共産主義に目覚める訳ではないですが、蟹工船の過酷な労働環境や監督から船員たちへのひどい仕打ち、どうにもならなさなどがもう気持ち悪くなるぐらいの臨場感で伝わってきます。
「糞壺」と呼ばれている船員たちが寝泊りする部屋、ノミやシラミだらけの不潔な環境、カムサツカ(カムチャッカですね)の荒れ狂う海、蟹の生臭い匂い、などが圧倒的表現力で脳内に出てきます。
まーーーこんな状況なら革命も起こるわな、という感じがあります。
ちなみに私は27歳のとき初めて自分が蟹アレルギーでしかも長年苦しめられたスギ花粉やヒノキ花粉よりもアレルギーが重たいことを知りました。
普通に好きなんですがね。あと蟹座だし。